「どうせ僕なんて……」
ある日、軽度の自閉症スペクトラムのある長男がぽつりとこぼした言葉です。特性から苦手なことも多く、先生から注意を受けたり、周りと比べては自信を失っていく姿が、見ていて胸がぎゅっと締め付けられる思いがありました。何かしてあげたい。でも何が正解なのか、当時の私にはわかりませんでした。そこで色々と調べていて、たどり着いたのが「自己肯定感」という言葉でした。最近よく「自己肯定感」という言葉を聞くけれど、それは一体どういうものなのでしょうか。
自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れられる感覚」のこと。それが育ちにくい環境では、子どもは失敗を過度に恐れ、挑戦することを避けるようになります。逆に、自己肯定感が育つと、失敗してもくじけず前を向く力がつきます。
子どもの自己肯定感の土台をつくるうえで、もっとも大きな影響を与えるのが、日々いちばん近くにいる親との関係です。この記事では、私自身の経験もまじえながら、今日からできる具体的な関わり方をお伝えします。
子どもの自己肯定感を高めるために親ができること
ここでは、家庭の中で今日から意識できる関わり方として、子どもの話の聞き方や成功体験の積み重ね方など、自己肯定感を育てる具体的なポイントを紹介します。
子どもの自己肯定感は、特別なイベントではなく、日常の小さなやり取りの積み重ねの中で育まれます。
なぜなら、子どもは親との日々の関わりを通して、「自分は大切にされている存在だ」と感じるようになるからです。
例えば、子どもが話しかけてきたときに手を止めて顔を見て話を聞く、最初に「そうなんだね」と気持ちを受け止める、といった関わり方があります。こうした何気ない対応の積み重ねが、子どもの中に「自分は大丈夫だ」という安心感を育てていきます。
このように、特別なことをする必要はありません。日常の会話や態度の中での小さな関わりこそが、子どもの自己肯定感を育てる大切な土台になります。
毎日の会話でできる自己肯定感の育て方
この章では、毎日の子どもとの会話においてできる、親の話の聞き方について具体的に説明します。
子どもとの会話において、もっとも大切なのは「ちゃんと聞いてもらえた」という実感を子どもに持たせることです。なぜなら内容の良し悪しより、「この人は自分の話を聞いてくれる」という安心感が、自己肯定感の根っこを育てるからです。
子どもは、親に自分の話を最後まで聞いてもらえたとき、初めて「自分は大切にされている」という実感を持てます。傾聴こそが、子どもの自己肯定感を育てる基本なのです。
— 明橋大二(精神科医・『子育てハッピーアドバイス』著者)の著書における主旨より
「あなたはどう思う?」と意見を尋ねる習慣も効果的です。親が答えを先に出してしまうのではなく、子ども自身に考えさせることで、「自分の意見には価値がある」という感覚が育ちます。
今すぐできる話を聞くポイント4つ
・ 最初の一言は「そうなんだね」「それは辛かったね」などと気持ちを受け止める
・ 子どもの発言を否定せず、まず話を最後まで聞き、共感してから、アドバイスや意見を伝える
・ 「あなたはどう思う?」などと意見を引き出す問いかけを意識する
例えば、私には10歳、8歳、1歳の3人の子どもがいます。仕事と家事と育児をほぼワンオペで行っているため、常にバタバタとしているのですが、その中でも少し意識していることがあります。
それは、料理の途中などに子どもが話しかけてきたら一旦作業をやめ顔を向けて、「話を聞くよ」と態度で子どもに示します。もしそれが今すぐできない場合は、「あと5分だけ待ってね。」などと話を聞ける体勢にするようにします。
そして、子どもが話し始めたら、発言をすぐに否定せず、まず気持ちを受け止めることを心がけ、話を聞くことに徹します。そして最後に「大丈夫だよ。」「話してくれてありがとう。」など子どもが安心できる言葉をかけ、最後にハグをします。
以前子どもに、「お母さんは話を聞いてない!」と言われたことがあり、ドキッとしたことがありました。忙しいと、作業しながら適当に話を流し聞きしてしまって、子どもにもそれは伝わってしまっていました。
上記をするようになってから、話を聞いてないと言われないどころか、自分もきちんと子どもと向き合う時間を少しでも取れていると思えるようになりましたし、あれほど頻繁に聞こえていた「どうせ僕なんて」という言葉が、最近ではほとんど聞かれなくなりました。
大人でもそうですが、最後まできちんと話を聞いてもらえると、どんなにイライラしていても、気持ちが落ち着いてきて安心し、逆に話を遮られたり、すぐに否定されて話を聞いてもらえなかったと思うと、モヤモヤした感情が残ると思います。
このように、日々の会話において、「話を最後まできちんと聞いてもらえた」という実感を子どもに持たせることが、最も大切であり、この安心感が、自己肯定感を育てることに繋がるのです。
子どもの「できた」を増やすサポート
この章では、子どもの「できた」という成功体験を増やす親のサポートの仕方を、具体的に説明していきます。
自己肯定感を育てるポイントとして、大きな成功より、小さな「できた」を積み重ねることから生まれるという考え方があります。なぜなら、自己肯定感の根幹には、「自分はできる」という自己効力感があるからです。そのため、親のサポートで大切なのは、小さな「できた」を増やせる環境をつくることです。
結果ではなくプロセスを褒めることで、子どもは「努力する価値がある」と感じます。これがいわゆる「成長型マインドセット」を育てる土台となり、次の挑戦への意欲に繋がっていきます。
また、失敗したときのフォローも欠かせません。「失敗しても大丈夫」「次どうするか一緒に考えよう」という姿勢が、子どもに「失敗は終わりではない」と教えます。
今すぐできる小さな「できた」を増やすポイント4つ
・ 「上手に」ではなく「工夫して」「粘り強く」と過程を褒める
・ 失敗を責めず「次どうする?」と前向きに切り替える言葉をかける
・ 目標を子ども自身に決めさせ、達成感を自分のものにさせる
例えば、わが家でその大切さを実感したのが、長男の作文の宿題でした。学年が上がり、原稿用紙4〜5枚の作文が宿題で出たとき、長男は泣きべそをかきながら言いました。
「絶対無理。自分には書けない。」
何もない0のところから100(完成)へ一気に飛ぼうとするから、怖くなる。そこで私は、ステップをとことん細かく分けることにしました。
まず「テーマに関係する最近の出来事をいくつか書き出してみよう」
次に「その中でいちばん書きたいことを一つ選ぼう」
それから「大まかな流れを話してみて」と口頭でアウトラインを引き出し、
2〜3日かけて少しずつ肉付けをし、書き進めていきました。
そしてこのとき、私が意識して変えたのが「褒め方」でした。
「上手に書けたね」ではなく、「〇〇のように、工夫して書いたね」「粘り強く続けられたね」と、過程を言葉にするようにしました。
小さいできたを積み上げることで、確実に完成というゴールに近づいていることが実感でき、また、過程を褒めることで、途中で諦めそうになっても、もう少し頑張ってみようとやる気に繋がったと思います。仕上がったとき、長男は自分でも驚いた顔をしていました。
「絶対無理だと思っていたのに、できた!」本当にほっとしたような、嬉しそうな顔をしていました。その出来事や、長男の様子が、とても忘れられない瞬間でした。
さらに、嬉しいことがありました。ここまで頑張って書いた作文は、地元の作文集で入賞し、表彰状までもらったので、まさか苦手な作文で表彰状までもらえると思っていなかった長男は、とても驚き、結果的に自信に繋がるような出来事となりました。
このように、小さな「できた」を日々積み重ねることで、自己肯定感を育てることに繋がり、次の挑戦へと努力できる土台が作られていきます。
親自身の自己肯定感も大切
この章では、親自身の自己肯定感を育てるヒントとなる考え方をご紹介します。
子どもの自己肯定感を育てたいなら、親自身の心の状態にも目を向ける必要があります。なぜなら、親が自分を追い詰め、常に焦っていると、その緊張は日常のやりとりを通じて子どもに伝わっていくからです。子どもたちがのびのびと安心した気持ちで過ごせる環境を整えることも、子どもの自己肯定感を育てる上で大切だと言えるでしょう。
ここで、ある言葉をご紹介します。
子どもが必要としているのは「完璧な母親」ではなく、「ほどよく良い母親(Good-enough mother)」です。小さな失敗や対応の遅れがあってこそ、子どもは自立心やストレス耐性を育んでいきます。
— ドナルド・W・ウィニコット(英国の小児科医・精神分析家)の理論における主旨より
前述した通り、私には10歳、8歳、1歳の3人の子どもがいます。仕事と家事と育児をほぼワンオペでこなす毎日の中で、先生から「忘れ物がありました」などと連絡が入るたびに、「なぜもっとちゃんとできないんだろう」と自分を責めていた時期がありました。
そんなとき、上記の言葉を知りました。「もっと完璧にしないと」と緊張感でいっぱいだった私は、全く余裕がなく、育児に自信がなくなっていました。この言葉に出会った時、「完璧な母親」でなくても良いんだと肩の力がすっと抜け、安堵したのを覚えています。
私はまだ母親歴10年。何でも知っていて、何でも完璧にできる必要はない。
子どもたちと一緒に、私も少しずつ成長していけばいい。
そう思えるようになってから、余裕が生まれ、子どもへの関わり方も少しずつ変わっていった気がします。親が自分自身を「まあいいか」と許せるようになると、子どもにも同じ眼差しを向けられるようになります。完璧な親でなくていい。一緒に笑って、一緒に悩んで、等身大の姿を見せることが、子どもにとって「自分もそれでいいんだ」という安心感のモデルになるのです。
もし今、子育てに苦しさを感じているなら、信頼できる人に話す、専門家に相談するなど、自分の心を回復させることも立派な子育ての一部です。
まとめ
この記事では、子どもの自己肯定感をあげるための、今日からできる日常の親の関わり方について説明しました。
・スモールステップに分解して、小さな「できた」を積み重ねることや、過程を褒めることで、自己肯定感を高め、次の挑戦ができる心の土台を作っていく。
・「完璧な」親を目指すのではなく、「程良い」親が子どもの自立心やストレス耐性を育む。
子どもの自己肯定感は、親との毎日のやりとりの中で育まれます。特別なことは何も必要ありません。そして、お母さんもお父さんも「完璧」である必要はどこにもありません。
いつも頑張っている自分自身にも「よくやっている」と言ってあげてください。
親の心の余裕が、子どもへの温かい関わりを生み出します。
多くの方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント